『ある奴隷少女に起こった出来事』ハリエット・アン・ジェイコブズ いち読者の感想とあらすじ紹介

『ある奴隷少女に起こった出来事』ハリエット・アン・ジェイコブズ

ある奴隷少女に起こった悲劇 ハリエット・アン・ジェイコブズ
「人間が奴隷として売り買いされていた。」

この言葉だけでは伝わらない実話があった。

紹介

あなたは、「奴隷」という単語を知っていますか?

おそらく聞いたことはあるでしょう。

「奴隷制」だとか、「奴隷交易」だとか、人が奴隷として、人ならざる家畜として、扱われていたという事実を、おそらく知っていることでしょう。

私もここまでは、知っていました。

しかしこの本を読むまで、私のなかの「奴隷」像は、この程度でとまっていました。

私のなかの奴隷像、奴隷労働のイメージは、

・老若男女問わず、肌の黒い、表情のない人々

・炎天下の綿畑

・腰をかがめて一日中綿を摘む

こんな光景でした。

この本を読んで、衝撃とともに私は、自分は奴隷について知っていることが足りなかったと気づきました。

「奴隷」という立場に人を置いて見ては分からない、ぜひとも知るべき面があります。

あらすじ

この本は、ノンフィクションです。

今から150年前に実際に生きていた奴隷の一人によって書かれた自伝なのです。

この自伝小説の著者ハリエット・アン・ジェイコブズは、1813年、アメリカのノースカロライナ州に、奴隷として生まれました。

私がこの本から教わり、与えられた衝撃を示すために、ハリエットこと、この本のなかではリンダ・ブリントという名前の少女の生い立ちを、紹介します。

リンダの両親はともに奴隷でしたが、ここではとくに母親について取り上げたいと思います。

リンダと彼女の母親の所有者は、白人の女性で、リンダの母親とは乳姉妹の関係でした。

同じ女性の乳を飲み、ともに遊び笑いあって幼年時代を過ごしても、大人になると奴隷と所有者になってしまうのです

どうしてこんなことがあり得るでしょう?

でも、リンダ・ブリントこと、ハリエット・アン・ジェイコブズの生きた時代は、リンダの母親は奴隷のうちでは恵まれた方でした。

彼女の乳姉妹は、彼女がたった8才のリンダと5才の弟を遺して亡くなるときに、二人の子供に苦労をさせないことを約束し、生涯守ってくださったのですから。このように、奴隷と所有者の間の約束が守られることは、当時はほとんどありませんでした。

心優しい女主人のもとでの幸せは、リンダが12才になる頃に終わってしまいました。主人は病で亡くなり、忠実なリンダは、遺言によって、所有物として譲与されてしまったのです。

感想

この本を読み、小説という表現形式を通して、私はハリエットの言葉を聞きました。

先述の通り、ハリエットは私に、たくさんの未知だった事実を教えてくれ、そして奴隷として生きた人間への認識を深め、私の心を揺り動かしてくれました。

おそらくこの書評では、私が彼女から受け取ったことの一部しか現れていないでしょう。

この紹介をきっかけに、あなたが『ある奴隷少女に起こった出来事』を知ってくださることを願っています。

[出来事]

私の知るリンダ・ブリント、そして、ハリエット・アン・ジェイコブズは、女性的な強さと人間としての力を持っている女性です。

まず、タイトルを考えてみましょう。

私は初め、このタイトルを間違えて読んでいました。

てっきり、『ある奴隷少女に起こった悲劇』だと思っていました。

ハリエットは、しかし、『出来事』ととらえています。

彼女は、自分の運命が奴隷として虐げられた悲惨なものだった、苦しい人生だったと嘆いてはいないのです。

彼女は、女主人の遺言によってフリント家に譲与されたことで、それまでの、一家が揃っていて、家族の愛情に守られていた幼年時代、心優しい女主人に心から仕えた少女としての時代が終わったこと、冷たく扱われ、みじめで孤独な奴隷としての生活が始まったことを書いています。

しかし、彼女の言葉には、決して幸福に恵まれなかったからといって、そのことに嘆くことはないのです。

たしかに彼女は嘆き、苦しみ、奴隷であるために受けた卑劣な言葉について汚らわしいと嫌悪しています。

でもそれは、彼女の運命に対する嘆きではないのです。

[愛情豊かで上品な言葉]

私は、この小説を一通り読み通した者として、著者の受けた辛苦や恐怖や貶めるような言葉、それに耐えがたい緊張を、ここに書き連ねて紹介することもできるでしょう。

ですが、私はそれよりも、彼女の苦しみと忍耐によって洗練され、高められた言葉を紹介することを好みます。

彼女の辛苦の体験は、本人の言葉によって知っていただきたいのです。

お嬢さんは、わたしが針仕事に疲れたように見えると、行って遊んでいらっしゃいと、送り出してくれた。わたしは野原に走りだして、ベリーや野の花を夢中で探し、お嬢さんのお部屋に飾った。

これは、リンダの母親が亡くなり、母親の乳姉妹である女主人にお仕えしているときの一節です。

あたしの子どもたちはどこへ行ったかわからねえ。わかることもねぇだろう。

これは、リンダが聞いた年老いた女性の言葉です。この女性は、自分の子どもたちをみんな、奴隷として売られてしまっていました。

どんなペンの力をもってしても、奴隷制によって作り出され、すべてを覆いつくす堕落を十分に表現することはできない。

奴隷の少女たちは淫らさと恐怖の中で育つ。

しかし、抵抗しても希望はないのだ。

私は、この本の一読者として、これはぜひともお伝えしたいと思っています。

著者ハリエットの言葉は、洗練されています。

奴隷の所有者が彼女に投げかけた言葉、行為を連ねてはいません。

彼女は自身の辛い体験を人に聞かせたいのではなく、奴隷制そのものを伝えようとしているのです。

わたしは神が作った最も弱い生き物かもしれない。でも絶対に負けるものか。誰のためでもなく、自分自身のために!

誉ある友人たちに親しくしてもらった思い出は、人生最後のときまで、わたしを離れないだろう。

まとめ

奴隷制度とはどのような仕組みかを、知っていますか?

奴隷労働で、人々がどのように働いたか、知っていますか?

奴隷として生まれた誰かの一生を、その人の辛さと幸せを、あなたは聞いたことがありますか?

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