君たちが死ぬ夢をみた

もしこの夢を話したなら、君たちはどんな顔をするだろう。

千尋といろはは笑うかな。騎士は絶対顔をしかめる。璃莉愛はきっと怒るだろう。冥王はたぶん、無関心。

ごめんね、こんな夢をみて。

君たちの主であるボクが、君たちが死ぬ夢をみた。

ボクは大好きな君たちに、死んでほしいとは思わないのに。

最初に千尋が殺された。

事件とか、狙われてとかじゃなかったと思う。

幼い子供を庇ったら、汽車に引かれて死んじゃった。

そんな感じの雰囲気だった。

璃莉愛が怒って泣きながら、何か叫んで、わめいていた。

その声は聞こえなかったけれど、彼女はそれでも美しかった。

どんなときもそうあるように、彼女はとても気高かった。

冥王が彼女を抑えていたけれど、それさえも振り払いそうで、彼は珍しく必死だった。

璃莉愛の愛は、すごく強い。彼女はなにより、千尋に愛される者だから。

千尋を追って、彼女は死んだ。

どうやって死んだのかは分からないけど、彼女が死んだことは分かった。

夢の中でボクは、ああ、璃莉愛も死んだんだ、って思ったから。

次に死んだのはいろはと騎士。

二人でいっしょだったのか、いろはが死んで、騎士が死んだのか、これもまた分からなかった。

でもきっと、二人は同じところで死んだ。

二人は双子だったから、同じ場所に生まれて、同じ場所に死ぬはずだった。

たぶん、ほとんど同じ時間に。

崖から飛び降りたのか、銃を使ったのか。

どちらかだろうな、とは思う。

最後には、冥王が残った。

彼は、死んだのかさえ分からない。

目の細かい砂みたいに、さらさらと飛んで消えていったから。

あれが人の死に方の一つなら、ボクは今朝、午前八時十分、君たちが死ぬ夢で目が覚めた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする