シュガーコート・ストーリー第三弾!

【リリア&メイト】

「もう夕日は沈んだわ。」

白い寝室のベッドに身を沈めたまま空を眺める赤茶髪の少年に、金髪の少女が淡々と言った。

「貴方が眠っている間にね。貴方はもう、まる二日眠っていたのよ。」

「そうか…悪いな。」

少年の静かな声に、少女は首を振って応える。少年が眺める空には美しい新月と、無数の見えない星座が散らばっていた。

【メイト&イロハ】

「綺麗な新月だな。」

赤茶髪の少年が、真っ暗な夜の砂浜に呟いた。

「そうだね。」

暗闇から、少女の声が応える。声の主は、砂浜に座って海を眺めていた、紫髪の少女だった。

「もういいの?歩きまわっても。」

「ああ。」

二人は、とても静かにときを過ごした。はるか遠い人の明かりを眺めながら、不意に少女が呟いた。

「こんなに真っ暗だったら、すぐ隣で誰かが死体を埋めてもきっと分からないね。」

少年は肩をすくめて、声は出さずに呟いた。

「そんなことは、―――に言えよ。」

【ナイト&チヒロ】

「朝日ならもう、とっくに昇ったぜ。」

深い海の奥底の、明るく暖かな庭園で、昼の紅茶を過ごしていた紫髪の少年は、旅の少年に笑って言った。

「そうだろうね、君がここにいるんだから。」

旅の帰りに寄ったとみえる、黒髪のその客人は、椅子の一つに腰掛けて、静かに紅茶を注ぎ、飲んだ。

「彼女は?」

「上だよ。お前に言いたいことがあったってさ。」

「そう、ありがとう。」

【チヒロ&イロハ】

小さなテーブルに山のように積み上げられたケーキ、タルト、冷たいクリーム。

この山を前に、紅茶を淹れる少女の小さな庭園に訪れた黒髪の客人は、開口一番問いを飛ばした。

「それで、いろは。僕に言いたいことって?」

「言いたかったこと。ここには合わないから、そこのウサギの席をどうぞ?」

庭園の主、紫髪の少女がウサギの人形を座らせた席を勧め、茶会の客人、黒髪の少年が人形を抱いて腰掛けた。

「それにしても、本当に人形が似合うんだね、ちひろって。」

「ありがとう…喜んでいいの?」

「もちろん。」

大量のケーキのクリームが溶け、タルトのシュガーコートが溶け、冷たいクリームが溶けきったころ。黒髪の少年が席を立ち、庭園の時計を眺めて呟いた。

「もうすぐ、日が沈むね。」

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