【リリア&メイト】
「もう夕日は沈んだわ。」
白い寝室のベッドに身を沈めたまま空を眺める赤茶髪の少年に、金髪の少女が淡々と言った。
「貴方が眠っている間にね。貴方はもう、まる二日眠っていたのよ。」
「そうか…悪いな。」
少年の静かな声に、少女は首を振って応える。少年が眺める空には美しい新月と、無数の見えない星座が散らばっていた。
【メイト&イロハ】
「綺麗な新月だな。」
赤茶髪の少年が、真っ暗な夜の砂浜に呟いた。
「そうだね。」
暗闇から、少女の声が応える。声の主は、砂浜に座って海を眺めていた、紫髪の少女だった。
「もういいの?歩きまわっても。」
「ああ。」
二人は、とても静かにときを過ごした。はるか遠い人の明かりを眺めながら、不意に少女が呟いた。
「こんなに真っ暗だったら、すぐ隣で誰かが死体を埋めてもきっと分からないね。」
少年は肩をすくめて、声は出さずに呟いた。
「そんなことは、―――に言えよ。」
【ナイト&チヒロ】
「朝日ならもう、とっくに昇ったぜ。」
深い海の奥底の、明るく暖かな庭園で、昼の紅茶を過ごしていた紫髪の少年は、旅の少年に笑って言った。
「そうだろうね、君がここにいるんだから。」
旅の帰りに寄ったとみえる、黒髪のその客人は、椅子の一つに腰掛けて、静かに紅茶を注ぎ、飲んだ。
「彼女は?」
「上だよ。お前に言いたいことがあったってさ。」
「そう、ありがとう。」
【チヒロ&イロハ】
小さなテーブルに山のように積み上げられたケーキ、タルト、冷たいクリーム。
この山を前に、紅茶を淹れる少女の小さな庭園に訪れた黒髪の客人は、開口一番問いを飛ばした。
「それで、いろは。僕に言いたいことって?」
「言いたかったこと。ここには合わないから、そこのウサギの席をどうぞ?」
庭園の主、紫髪の少女がウサギの人形を座らせた席を勧め、茶会の客人、黒髪の少年が人形を抱いて腰掛けた。
「それにしても、本当に人形が似合うんだね、ちひろって。」
「ありがとう…喜んでいいの?」
「もちろん。」
大量のケーキのクリームが溶け、タルトのシュガーコートが溶け、冷たいクリームが溶けきったころ。黒髪の少年が席を立ち、庭園の時計を眺めて呟いた。
「もうすぐ、日が沈むね。」