・14、5歳の、若い女の子がリビングで携帯を拾いました。
「ねぇ、おばあちゃん。何でこんなところに携帯落としてるの?」
・開いたままの携帯は、彼女のおばあちゃんのものだったよう。
・テーブルに携帯を置きました。
「落ちちゃったんだねぇ、ありがとうね。」
「うん。」
・すぐそばの台所にいたおばあちゃんが笑って、お礼を言いました。
・優しいおばあちゃん。いろはも大好きです。
「体調大丈夫?」
「大丈夫よ、玲衣は優しいねぇ。心配してくれて、ありがとうねぇ。」
「うん。ならよかった。」
・彼女は自分の携帯を持って、ヘッドフォンをつけました。
・玄関に腰掛けて、フンフン鼻歌を歌っています。
・どうやら、音楽を聴いているようです。
・いろはも好きな音楽です。
「玲衣、手伝って!」
・居間からママが呼んでいます。
「はーい!」
・ヘッドフォンを外して、携帯と一緒に置きました。
・台所を覗くと、ママが包丁を握っています。
・ニンジンを切っているようです。
・足元には、茶色くて小さい犬が寝そべっています。
「玲衣、玉ねぎとキャベツ切ってくれない?」
「いいよ。」
・ママの隣にサッと洗ったまな板を置いて、彼女はキャベツをとりました。
・キャベツをむいて、千切りを作るようです。
「お母さん、今日のご飯は?」
「豚カツよ。貴女、好きでしょう?」
「うん!」
・ママと二人、料理をしています。
・外は暗いので、夜ご飯を作っているのでしょう。
「完成よ。玲衣、おばあちゃんを呼んできて。」
「はーい。」
・彼女は台所をでました。
・おばあちゃんを探しに行ったのでしょう。
「おばあちゃん?」
・見つかりません。
「おばーちゃん!おかーさん!」
・返事もありません。
「エル?ジェー?ジル?」
・彼女の飼い犬たちを呼んでも、一匹も来ません。
「メアリー!?」
・彼女の飼い猫を呼んでも、返事も聞こえません。
「おばあーちゃーん!おかあーさん!」
・人の気配すらありません。
・まぁ、仕方がないです。
・そこにいるのは、彼女だけですもの。
「こんにちは、僕のそっくりさん!」
「キャア、だ、誰!?」
「君だよ。」
「何!?」
「だから、僕は君さ。僕は、君なんだよ。」
「ど、どういうこと…よ。」
「だ、か、ら、僕は君なんだよ!中原玲衣、それは僕だ!君は中原いろは!」
「ち、違うわ!私は玲衣よ!?」
「さっきまでは、ね。僕は君になったんだ!だから君は僕になった。」
「どういうことよ!?」
「入れ替わりだよ。さぁ、おばあちゃんを呼びに行かなくっちゃ!」
「えっ…いやよ!私は「中原いろはだよ?ねぇ?」…私は…」
目の前で彼女がすぅっと消えていく。さっきまで僕(いろは)だった、「生まれてすぐに死んだ中原玲衣」が。
「おばあちゃん、ご飯だよ。」
「呼びに来てくれたの?ありがとうねぇ、いろは。」
「うん!」