Aからの贈呈品

【第三章:ボクがAと出会うとき。】

ボクは、今年20歳になった。

一週間後に成人式だ。今日は、一足先におばあちゃんの家で集まって、ボクの

成人のお祝いをしている。午後からは、はとこのいろは姉さんも来る。ボクの

14歳年上であまり関わりはなかったけれど、今日は途中から来てくれるらしい。

いろは「こんにちは~!」

雷徒「久しぶり、いろはちゃん。」

いろは「すごくおひさ~!龍斗君、一週間早いけど成人式おめでとう!」

龍斗「ありがとう、いろは姉さん。お仕事、忙しくない?」

いろは「全然、大丈夫だよ。もうすぐ本を出したいんだけど、あとちょっとで書き終わるしね。」

いろは姉さんは作家さんで、よく分からない話をすることが多い。独特の世界観、とでもいえばいいんだろうか。

雷徒「いろはちゃん、それは?」

ボクの従兄でいろは姉さんのはとこ、雷徒兄ちゃんが不思議そうに聞いた。雷徒兄ちゃんの弟、玲師兄ちゃんも首を傾げている。

いろは「んー?何だろうねぇ?」

雷徒「カード、見えてるよ。」

いろは「あっ、見えてた?それなら仕方ない。龍斗君、Aからの最後の贈呈品(プレゼント)だ!」

龍斗「あ、ありがとう…じゃあ、Aって…」

いろは「違うよ、僕はAじゃない。ただAからこれを預かっただけ。君への最後の贈り物として、ね。」

龍斗「…うん。届けてくれてありがとう、いろは姉さん。」

いろは「いいってことよ!さぁ、カードを読んで、プレゼントを開けてみなよ。」

〝To you who became an adult

Congratulations on a coming-of-age ceremony.

This is the last present but, I think that this book becomes important for you.

Thank you for 20 years.

With love A.”

〝大人になった君へ。

成人式、おめでとう。

これが最後のプレゼントになるけれど、僕はこれが君にとって大切なものになると思う。

20年間、ありがとう。

愛をこめて、A。“

中には、不思議の国のアリスが入っていた。幼い少女アリスがみた、御伽の夢の物語。

いろは「開いてみて。」

龍斗「え…あ、ポストカード?」

不思議の国のアリスの絵本の間に、ピーターパンのカードが一枚挟まっていた。裏には、一行だけ英文が。

〝Please don’t forget me and my world.”

いろは「僕と、僕の世界をどうか忘れないで。」

カードを見つめる僕に、いろは姉さんが呟いた。カードは見ないまま、天井を見つめて。

いろは「それが、Aからの最後のメッセージ。彼は子供だから、帰っちゃったんだ。子供のための王国に。」

ありがとう、A。君はボクに、とてもステキな夢をくれたよ。

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