小児性道化師症候群 【序章:少年団員C・Kの記録】

【序章:少年団員C・Kの記録】

「ピエロ症」と呼ばれる病気をご存知でしょうか。

これは、正式名称を「小児性道化師症候群」といって、物心がつく5、6歳から子供らしさが自然と抜け始める12、3歳までの子供たちだけが発症するとされた原因不明の感染症です。ピエロ症を発症した子供たちは、もとの性格に関係なくどの子も道化のように振る舞い、周囲を笑わせようと努めました。

・普段の趣味・嗜好には関係なく、どの子供もピエロのように派手で滑稽な装いをし、道化師まがいの行動で周囲の人々を喜ばせる。

・自分の意志は自然と無視するようになり、増えすぎてそこらにあふれかえったピエロを疎むようになった人々の蔑みと、それによって傷ついた己の心身には気づかないフリをする。

ピエロ症に罹ったほとんどすべての子供たちに共通した、ピエロ症の主な症状です。ピエロそのものを体現したようなその症状から「小児性道化師症候群」、通称「ピエロ症」と名付けられたこの病は、多くの子供たちを洗脳し、狂わせました。

これが読まれているころには、きっともうこの病は忘れ去られているでしょう。僕がこれを書き終えることができるかどうか、それはまだ分かりません。もしも途中で終わっていたら、それは一人の少年の命、もしかしたら五人の訓練された少年少女と彼らを率いた一人の頼もしい若者の命に、望ましくないことが起こったということです。

僕は政府管理下のピエロ症研究・対策組織「サーカス・サナトリウム」の少年部隊「イノセント・サーカス」の一員でした。

(ピエロ症が流行してすぐ、政府は対策と研究のために「サーカス・サナトリウム」を設立し、ピエロ症患者である子供たちを傷つけずに確保するため、力強い大人ではなく成長途中の子供を訓練して実動部隊「イノセント・サーカス」を組織しました。「イノセント・サーカス」は「サーカス・サナトリウム」の部隊の一つです。)

イノセント・サーカスの一員として活動し、ピエロ(ピエロ症患者のことです)たちを観察しているうち、僕たち五人の団員、そして僕たちを率いた団長はこの病気に関する重大な事実を知ることができました。ピエロ症と、それに関するこの大切な情報を消し去ってしまわないために、僕はこれを書き残します。

もしもこれを読んだ人がいたら、どうか、お願いだから、この本を守って…

どうか忘れてしまわないで!

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