【終章:元少年団員C・Kの告白】
カーリーは無事、生きて僕たちのもとに帰ってきました。サイコパス・ピエロになっていましたが、それぞれ心が衰弱した、僕と、レオナルド、リコリス、ウーゴといっしょに団長の下で過ごすうち、徐々に回復し、彼女はピエロではなくなりました。
カーリーを取り戻したあの日、僕は彼女を撃った直後、彼女の悲鳴を聞いて倒れたと聞きました。レオナルドもほとんど意識を保てておらず、リコリスとウーゴがあのサイコパス・ピエロを撃ったそうです。団長が僕たちを迎えにあの場所に着いたのは、僕が倒れて、二人がピエロを撃退した直後でした。
あの嫌な出来事が終わったのは、まだ夜が明ける前でしたが、その日の夕方頃、団長はバスをある都会風の家の前に停めました。バスの座席の窓から読んだその家の銀色の表札には、オルコットと彫ってありました。リコリスの家でした。
僕は、まさか皆それぞれの家に帰されるのかと不安になりましたが、帰ったのは一人だけでした。リコリスの弟、マーフィー・O・オルコットです。リコリスはこの弟がピエロになったことがきっかけでI・Nに入りました。当時、僕たち五人のうちでたった一人、銃の代わりに白衣を身につけたカーリーがマーフィーの治療を担当しましたが、最初のサイコパス・ピエロとして治療された後、この子はずっとS・Sに留められていました。数年来のリコリスの望みを叶えるため、団長はS・S本部に行って連れ出してきたのです。マーフィーは、バスを降りるとき「お姉ちゃんといっしょがいい。」と泣きましたが、リコリスは弟を一人帰らせました。
「さよなら、マーフィー。元気でね。」
マーフィーを送り返す前に、僕たちはそれぞれ、「君が望むのなら、家に送り届けるけれど、どうする?」と団長に聞かれました。
僕たちは誰も帰ることを望みませんでした。
僕は、ピエロ症に関する事実を、もう全て十分に書き終えたように思います。僕たちの、記録しておくべき数年間についても。
僕たちはあの後、それぞれの家にも、I・N寮にも帰りませんでした。I・Nには、帰れないのです。だから、しばらくの間バスに揺られて旅をしました。途中、僕は団長にお願いして、むかし通った小学校に立ち寄りました。
旧校舎二階南廊下の突き当りにある図書室、奥から二番目の書棚、一番下左から五番目の区画に、僕はこの本を置いて行きます。
そして、この本の大半を使って書いた、あの七日間の秘密会議と決行の日、それに僕たちをたくさん苦しめたサイコパス・ピエロについて、すっかり忘れてしまうことにします。
チャールズ・コナー