『未知物語』序章より

この地球という青い星には、少なくはない星々に似通った性質のものが備わっているのと同じように、地底に入口が空き、どこよりも星の中心に近くうがたれている洞窟があるはずだ。その底には唯一の池がある。上と下の目蓋をしっかりと封じている白い魚のようなものが水面までの半分浮かび、水底までの半分沈んでいる、とこしえに暗闇の池が。

未知というものは、いつも独特のかぐわしい予感と心から惚れこましてしまうもどかしい手つきで傍を歩いたものを魅惑してしまう。抗いがたい誘惑にまんじりとするように迷っているものは、すでに未知の物『焼切れるような興奮』と『悪魔の与える幸福』を蜜のようにたっぷり垂らした壺に落とされている。そうして、壺の底へ底へと夢中に求めていくうちに、蜜をひとしずくも持たない真実へと押し込められてしまうのだ。

それは、噓か本当か。見上げた青い空を遥か突き抜けた宇宙をまだ見透かした先にあらせられると聞く神も、踏んづけた地面をどこまでも沈んだのちに到達するという地獄の川も、人間でありながら全能の予知能力を与えられた預言者カサンドラも、誰も正解できない話をしよう。

これは、大きな未知に立ち向かってしまった者たちの、誰も知らない伝説の物語。

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